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カテゴリー「藤沢周平」の30件の記事

2018年12月25日 (火)

立花登青春手控え3 2

 藤沢周平氏の「獄医 立花登手控え」を原作とするNHKBSプレミアム時代劇「立花登青春手控え3」が完結。全7回と短いシリーズだったが、第6話「影の男」などが心に残る。

 但し、“ 人を知らずして医はその技を揮(ふる)えず 心を知らずしてその道を歩めず ”のコピーはいささか誇大広告気味か。

 立花登の「医術」によって救われたエピソードは僅か。彼の「柔術」によって不器用に生きる多くの人々が救われた。

2018年12月10日 (月)

闇の歯車

 CS放送「時代劇専門チャンネル」の開局20周年記念として藤沢周平原作が映像化されている。第3弾にして最後の番組が「闇の歯車」。

 藤沢作品の中で「闇の歯車」は異色と評されることが多い。「闇の歯車はサスペンス」というのが定説。確かに物語をジャンル分けすればそういうことになるが、藤沢氏の長編は「雲奔る」、「義民が駆ける」、そして「闇の歯車」と続く。藤沢氏がその後、大作家の道を歩んだ(時代小説家として。御本人は偉ぶる素振りもない)ことを顧(かえり)みれば、初期の作品といえる。

 刊行当時、既に直木賞作家だった藤沢氏に対して失礼だが、ある意味“試行錯誤” あるいは “目先を変える”という意味合いがあったのではないかと愚推する。藤沢氏がハードボイルドでも、淡い恋愛小説でも、“ジャンルを問わずこなしたであろう”ことは、氏のファンなら衆目一致するところだろう。

 今回製作される映像はテレビ放送の前に大都市の映画館で限定上映されるという。没後20年以上を経て、「藤沢作品の集客力」が試されているような気になる。佐之助を演じるのは瑛太、伊兵衛は橋爪功。CSでの放送は2019年2月9日。BS放送、つまり自分が視聴するのは来年の今頃だろうか。

2018年11月11日 (日)

立花登青春手控え3 1

 “ 人を知らずして医はその技を揮(ふる)えず 心を知らずしてその道を歩めず ”

 NHKBSプレミアムで「立花登青春手控え3」の放送が始まった(毎週金曜 20時)。2016年(8回)、2017年(8回)に続く、シリーズ最終作(7回)とされている。

 藤沢周平氏の「獄医 立花登手控え」を原作とする時代劇。

 「立花登は小伝馬町にある牢獄で医者として経験を積む。牢屋に出入りする人間たちに関わる事件や人情に触れ、持ち前の正義感と柔術の力で事件を解決していく。過去2つのシリーズでは人として目ざましく成長する登の姿が描かれた。最後のシリーズでは、登の将来に関わる新たな出来事が巻き起こる。医者としての仕事、従妹・ちえとの恋、そして事件。登が颯爽と活躍する姿を描く青春時代劇の最終章」(番組HPを抜粋引用・加筆)

 立花登を演じているのは溝端淳平。清廉なイメージは立花登を演じるに相応しい。見事なキャスティング。

2018年10月11日 (木)

よろずや平四郎活人剣 2

 「よろずや平四郎活人剣」の再放送を見終わった。全10回なのであっという間だった。

 同じ日、外国の有名な高視聴率ドラマを日本版にリメイクしたドラマを観たが、30分と観ていられなかった。

 人それぞれに好みがあるので構わないが、現代劇に感情移入することが難しくなり、時代劇だと多少の粗(あら)も気にならない。

 旗本・神名(かんな)家の末弟・神名平四郎は、兄である目付・神名監物とは腹違いの子。妾の子である平四郎は“冷や飯食い”の存在。 暮らしに窮した平四郎は裏店で「よろずもめごと仲裁つかまつり候」という看板を掲げる。世間知らずで楽天家の平四郎が巧みな「剣と口」で、よろずのもめ事を解決していく。神名平四郎は中村俊介、神名監物を内藤剛志が演じた。

 とても清々しいドラマの影響で、「よろずや平四郎活人剣」(上・下)を読み返している。

 裏店で「よろずもめごと仲裁つかまつり候」という看板を掲げた平四郎は、市井のもめごとに介入し、それを解決していく中で、自身の出自や生い立ちという境遇、そして自身に内在する劣等感という「もめごと」を同時に解決して行った。

    http://kasa.air-nifty.com/blog/2018/09/post-1541.html

2018年9月27日 (木)

よろずや平四郎活人剣 1

20180922 BS12チャンネルで「よろずや平四郎活人剣」(2007年 テレビ東京 全10回)の再放送が始まった。7~8月に放送された「悪党狩り」に続き、藤沢周平氏原作のテレビ時代劇。

 「よろずや平四郎活人剣」(1983年刊)を原作とするドラマといえば「新・腕におぼえあり」(1998年 NHK金曜時代劇)が有名。こちらは原作そのままのタイトル。 

 旗本・神名(かんな)家の末弟・神名平四郎は、兄である目付・神名監物とは腹違いの子。妾の子である平四郎は“冷や飯食い”の存在。 暮らしに窮した平四郎は裏店で「よろずもめごと仲裁つかまつり候」という看板を掲げる。世間知らずで楽天家の平四郎が巧みな「剣と口」で、よろずのもめ事を解決していく。神名平四郎は中村俊介が、神名監物を内藤剛志が演じている。

 初回放送を観たばかりだが、登場人物達の設定がまさに“藤沢プロット”。痛みや弱み、それぞれの想いを抱えた者たちが懸命に生きる姿を描いている。

   http://kasa.air-nifty.com/blog/2018/10/post-1541.html

2018年9月 1日 (土)

悪党狩り 3

 この夏、BS12で放送された40年近く前のテレビ時代劇「悪党狩り」全25回をすべて見た。作りの粗さもあるが、いくつかのチャレンジも感じた。何よりも藤沢氏の原作を採用したことは画期的だったろう。藤沢周平氏が描く世界のエッセンスはあった。

 “神谷玄次郎”は笛を奏でてから登場するが、神谷の笛があと3分早ければ、ずいぶん多くの命が救えたのだが。

 神谷玄次郎を演じたのは尾上菊五郎。鶴田浩二が準主役。毎回の豪華なゲストは菅原文太、藤山寛美、梅宮辰夫、中尾彬、火野正平、峰岸徹、野川由美子、小林稔侍など。今では亡くなったり、老人になった人ばかりだが、若かりし頃の名優の演技は見応えがあった。猛暑の夜をいくらか過ごしやすくしてくれた。

   http://kasa.air-nifty.com/blog/2018/07/post-14d9.html

   http://kasa.air-nifty.com/blog/2018/08/2-5ae2.html

2018年8月 6日 (月)

悪党狩り 2

 1980年に放送された時代劇「悪党狩り」を見ている。藤沢周平氏の「神谷玄次郎捕物控 霧の果て」(当時のタイトルは「出合茶屋」)を原作とするテレビ時代劇。

    http://kasa.air-nifty.com/blog/2018/07/post-14d9.html

 第14話には小林繁次郎という役名で当時、阪神タイガースのエースだった小林繁氏が出演している。江川卓氏とのトレード(「江川事件」)から2年目のシーズンオフ。友情出演というクレジットがついている。エンディング曲は、もんた&ブラザーズの「ばぁにんぐ」。1980年という時代を色濃く投影している。

 この時代劇はほぼダブル主演。物語のクライマックスで2人の剣客が、同心と医者という自身の職責を抛(なげう)って「悪党狩り」を行う。そこで2人は決めゼリフを言う。

 尾上菊五郎(1942-)演ずる北町奉行所 定町廻り同心同心・神谷玄次郎

  「悪党狩りよ。てめぇらのような悪党は生かしておくわけにはいかねぇんだ。地獄の道中手形を渡してやるからありがたく頂戴しな」

 鶴田浩二(1924-1987)演ずる町医者・新村出

  「私は医者だ。人の命を助けるのが仕事。だが、おまえたちは人間ではない。だから死んでもらう」

 毎回、非業の死をとげるのは1人か2人だが、悪党は10人か20人がバッサバッサと「狩られて」しまう。悪事を企むのは権力に眼が眩んだ悪代官か出世欲にかられた小役人。金の亡者となった政商や裏社会の頭領。それらから命令を受けた庶民や下っ端が日々の暮らしのために悪事を働く。

 昨日、今日の新聞にもそれと同じニュースが報道されている。明日も、明後日も、来年も変わらないだろう。

 現代の「悪党狩り」が必要だ。

2018年7月20日 (金)

「たそがれ清兵衛」という名刺

20180620 藤沢周平氏原作の映画化作品が相次いでテレビ放映されている。

 映画「たそがれ清兵衛」(2002年 山田洋次監督)は短編小説集「たそがれ清兵衛」(8編収録)のうち「祝い人助八」と、これとは別の小説「竹光始末」を原作としている。

 日本人の心の揺さぶり方を熟知している山田監督は、この「たそがれ清兵衛」というキャッチーなタイトルを見逃さなかったのだろう。

 映画として「たそがれ清兵衛」が優れていることに異論はない。しかし、この映画がヒットしたことで、「たそがれ清兵衛」が藤沢氏の名刺になったことには大いに不満が残る。藤沢作品が原作の映画として「たそがれ清兵衛」は真っ先にあげられることが多い。しかし、藤沢氏の小説として「たそがれ清兵衛」があげられることはないからだ。

 ある宴席で、珍しく藤沢氏の話題になったことがある。その宴席で「藤沢周平?たそがれ清兵衛か」としたり顔をされた時はほろ酔い気分が一気に醒めた。

 自分にとって、映画「たそがれ清兵衛」のハイライト・シーンは清兵衛が家老らに余後善右ヱ門を討つことを命じられる場面だ。清兵衛は善右ヱ門を討つが、どちらが討たれてもおかしくはなかった。そして、どちらが勝っても、両者ともに敗者であり、ともに被害者ということもできる。その宴席で「藤沢周平?たそがれ清兵衛か」と言った人物は、自分にとって「家老」の1人だった。

 映画「たそがれ清兵衛」が問いかけているもの。山田監督がテーマとしたのはサイドストーリーとして描かれる淡く切ない恋などではない。身分社会や藩政という組織の論理が優先される世界で、下級武士や庶民はそれに翻弄され、自らの意志は黙殺される世の中と、現代との共通点をあぶり出して見せることではなかったか。また、藤沢周平氏の著作で執拗に訴え続けたもの。その作品の読者たちが清涼剤として求め続けたもの。それらとは全く対極にいて、それらの傷みの欠片も理解していない人物までもが「藤沢周平?たそがれ清兵衛か」と語るようになってしまった。

 映画「たそがれ清兵衛」は素晴らしい映画。しかし、藤沢周平の名刺としては偽りの名刺だ。

2018年7月 8日 (日)

悪党狩り 1

 7月に入ってBS12チャンネルで「悪党狩り」(1980年10月~1981年3月 全25回 東京12チャンネル)という時代劇の放送が始まった。この時代劇は藤沢周平氏の原作が連続テレビドラマ作品として初めて使用されたものであることを知り、録画をはじめた。

 「悪党狩り」 北町奉行所 定町廻り同心・神谷玄次郎(尾上菊五郎)と町医者・新村出(鶴田浩二)が、秘密裏に悪党を退治する勧善懲悪の時代劇(番組HPから)

 「神谷玄次郎」は何度かドラマ化されているように、比較的映像化しやすい人物。番組の原作には「出合茶屋」というテロップが入っていた。「出合茶屋」を調べてみる。

 「出合茶屋 神谷玄次郎捕物控」は1980年に双葉社より刊行され、1985年に「霧の果て 神谷玄次郎捕物控」として、現在は「神谷玄次郎捕物控 霧の果て」として文春文庫から出版されている。

 第1話と第2話は合わせてひとつのストーリー。主演は現在では“人間国宝”になった尾上菊五郎と鶴田浩二。初回ゲストは菅原文太。池玲子という女優も美しい。当時は若手の錦野旦。他にも遠藤太津朗、玉川良一など昭和の個性派が出演している。

 全25話ということはおよそ5週間。古い時代劇を毎晩楽しみにしよう。

2018年4月28日 (土)

漆の実のみのる国

20180425 江戸時代中期・米沢藩の財政改革を成し遂げた上杉鷹山の生涯を描いた作品。本作品は1997年に刊行された藤沢周平氏の最後の長編小説。

 今日、記したいのは小説の内容ではなく「本の構造」のこと。今からほぼ20年前に刊行されたこの本は「本来の本の姿」をしていると思うから。

 まず、この本は函に入っている。函の装画は喜多川歌麿の「画本虫撰」(国立国会図書館所蔵)と高級感がある。

 函から本を出すと、本はグラシン紙という半透明の紙に包まれている。製本は上製本という造り。表紙は布地(クロス)素材が芯紙に貼られ耐久性が高く長期保存に適したつくりになっている。表紙は本の中身よりも3mm程度大きく仕上げるチリと呼ばれる仕様になっている。また、前後に見返しがある。綴じ方は無線綴じ(アジロ綴じ)で背は角背。表紙と背の間に溝がつけられ見開き時の収まりが良いように仕上げられている。

 本には天、地、小口(こぐち)、のど、喉布(のどぬの)、はなぎれ、表紙、折り返し、角(かど)、見返し、扉、標題紙、ジャケット、帯紙、チリ、背、折り込み、折れ込み、白ページ、平(ひら)、背文字、前書、後書、前付(まえづけ)など多くの技法が用いられている。