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2022年1月17日 (月)

パ・リーグと裏日本 ~水島新司氏の訃報に~

 今月10日に漫画家の水島新司氏が亡くなっていたことが公表された。

 少年時代に読んだ漫画は、ほぼ水島氏のものだった。漫画雑誌を買う余裕はなかったから、何か月かに1度、新刊が出ると自転車で買いに行っていた。あの頃が懐かしい。「ドカベン」、「あぶさん」、そして「野球狂の詩」。

 代表作「ドカベン」は野球漫画の金字塔と称される。そのことに何の異論もないが、「ドカベン」の1巻で主人公の山田太郎は柔道着を着ている。山田太郎は両親を失くし、畳職人の祖父とサチ子という名の妹と長屋で暮らす、ずんぐりむっくりの少年だ。

 「あぶさん」の主人公は酒好きな代打屋・景浦安武。所属は南海ホークス。エースでも4番バッターでもない、代打屋が主人公だった。

 「野球狂の詩」は女性プロ野球選手の物語が有名だが、10巻までの読み切りストーリーに味わいがある。架空の弱小球団・東京メッツを舞台として、野球選手だけでなく、野球を取り巻く、どちらかといえば不器用な人々の人間ドラマを見事に創作し、描写してみせた。

 水島氏はプロ野球では一貫してパ・リーグにスポットライトを当てた。個々の選手や球団の実力がありながら、人気・集客ではセ・リーグに劣ったパ・リーグの応援団だった。

 昭和の時代、日本海側は“裏日本”と呼ばれていた。高度成長で目覚ましい発展を遂げ、冬は降雪が少ない太平洋側が“表日本”で、経済成長や国土の近代化に劣後し、寒冷地でもある日本海側を“裏日本”とする区分があった。水島氏は裏日本・新潟の魚屋に生まれ、憧れの新潟明訓高校の校名を作品中の学校名として引用した。自身が卒業した白新中学の名をドカベンのライバル校・白新高校として登場させた。

 これらの事柄に共通するのは「日陰に咲く花を照射する姿勢」だろう。

 水島氏から習ったことは数え切れない。

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