赤と緑を混ぜると黒に
2021年6月3日付 新潟日報の記事から抜粋
「第四北越FG 統合の理念どこへ 本店移転に長岡経済界から反発の声」
第四北越フィナンシャルグループ(FG)が本店所在地を長岡市から新潟市に移すことを巡り、現本店がある長岡の経済界から2日、反発する声が上がった。旧北越銀行本店があった長岡にFG本店を置くことを、旧第四銀と旧北越銀が経営統合で掲げた「対等の精神」の象徴と捉える地元企業や市民は少なくない。3年とたたないうちに本店を移すことを唐突だと受け止め、25日に開催される株主総会で関連定款変更の議案に否認する意向を示す株主も出ている。「FG本店を長岡にしたことは、両行の合併が第四による吸収ではなく、双方の良さを残し、新しい銀行をつくるという理念の表れだったはずだ」FGの株主企業で取引先の社長は憤る。前身の第六十九国立銀行の設立から約140年。旧第四銀との合併後も「面倒見の良さで知られた北越銀の企業文化が残ってほしい」と考えてきた。そこに突然、表面化した本店移転案。前出の社長は「親しみやすさといった北銀の行風が失われるのではないか。北銀出身行員の士気が心配だ」と語る。既に議決権行使の受け付けが始まっているオンライン上で、議案を否認する意志を明らかにした。昨年金融庁に認可された旧第四銀、旧北越銀の合併方式は、第四銀を存続会社とし、北越銀を消滅会社とする「吸収合併」だ。ただ両行は2017年春、「対等の精神」をうたって経営統合協議を始め、共同持株会社(FG)を18年10月に設立した経緯がある。その際、長岡市の旧北越銀本店をFG本店、新潟市中央区の旧第四銀本店を「主な本社機能所在地」とした。今年1月に両行の合併で誕生した第四北越銀行の本店は、旧第四銀本店に置いている。同FGは、本店を今回移す理由について、FGと第四北越銀の本社機能を新潟市に集約したことを挙げる。だが、FGの株主で長岡市の老舗企業の経営者は「根回しもなく、はしごを外された。今後『長岡のために』と言われても本心なのかと思ってしまう」と納得できずにいる。会員数約2500の長岡商工会議所の会頭には、過去に旧北越銀の頭取経験者3人が就いている。旧北越銀は、名実ともに地域経済のけん引役だった。現会頭は「いずれこうなると思っていたが、市民感情もある。取引先として考え直す顧客が出てくるかもしれない」とみる。長岡市の受け止めも厳しい。長岡市長は「顧客の信頼感を大切にする金融機関だと思っていたので残念だ」と語る。(抜粋して引用)
旧第四は緑をバンクカラーとし、旧北越は朱色がかった赤がそれだった。店舗の看板にはそれらの色が使用されていた。2021年1月に合併して誕生した新銀行では青を基調としたデザインが採用されている。
色の3原色の法則では、緑と赤を混ぜると茶色になるとされている。ただし、それは茶色を作ろうとした場合の話だ。新銀行は何色を目指したのだろうか。もし看板に偽りなく青を目指すなら、緑も赤も必要ないだろう。青は3原色のひとつであり、色を混ぜて作ることは困難だ。地域銀行でありながら、地域を蔑(ないがし)ろにする銀行では尚更だろう。
地方銀行の経営環境が厳しいことは知られている。しかし、明治の時代から現在まで、地方銀行は地方で事業・商売をしてきたのだ。これまでの繁栄と蓄積、現在の苦境、そして、これからの未来も「企業としてここ(地方・地域)で生きていく」というビジネスモデルに変わりはないだろう。いや、変わりようがない。
「地方銀行に独り勝ちはない」というのが持論だ。地方銀行は地方と一心同体であり、その呪縛から解き放たれることはない。
およそ140年もの間、「地域から収益を上げていた」金融機関。その姿は紛れもなく「持つち持たれつ」だった。しかし、近年、その姿は「地域から利益を付け替える企業」に変容した。
赤と緑を混ぜてできた茶色は、相当に黒に近いのではないか。そして、さらに懸念されるのは、その「ニア・ブラック」が、今回のFG本社移転方針だけにとどまるのだろうかということだ。