差出人のない命・宛先のない命 ~こうのとりのゆりかご~
コウノトリは「赤ちゃんを連れてくる」と言われる。コウノトリが口ばしにゆりかごをくわえている姿が育児用品等のイラストに使われたりする。コウノトリが多産な種だからなのか、一夫一婦の種だからなのかを調べてみたが、そのような生態に「赤ちゃんを連れてくる」という言葉の起源がある訳ではなさそうだ。
10月25日、熊本県・慈恵病院理事長の蓮田太二理事長(84)が亡くなったという記事。「こうのとりのゆりかご」、通称「赤ちゃんポスト」を設置した人だ。
「赤ちゃんポスト」は2007年5月に設置され、2020年3月までに155人の赤ちゃんが預けられたという。育児放棄を助長する等、ポストの設置には批判的な声もあったが、蓮田氏の「捨てられる命を救う」という強い理念が、赤ちゃんポストを「なくてはならないもの」にした。
コウノトリは赤ちゃんを運んで来る訳ではなく、コウノトリ(近似種)の営巣や出産、そして、子育てを優しく見守った夫婦が子宝に恵まれた、という話が言い伝えになったものだという。
2007年5月から2020年3月は月数に換算すると155ヶ月。この間に預けられた赤ちゃんは155人。もちろん遇合に過ぎないが、「毎月1人ずつ」、差出人のない命を預かり、宛先のない命を救った彼こそが、現代のコウノトリだった。