バスタオルを育てる
生活必需の中でハンカチやタオル、ふきん、雑巾というのは、取り換え時期が難しい。壊れるということがないからだ。もちろん破れることや汚れることがあるが、タオルやふきんは雑巾として二次使用される。更に雑巾にも1軍と2軍がある。雑巾としての役割を終えても、タイヤ交換の際にタイヤやホイールを拭いたり、ベランダの雨どいを掃除するのに使う。
同じ理由で難しいのがバスタオルだ。使い古されたバスタオルは色あせて、向こう側が透けて見えるくらいになる。しかし、そのくらいの方が吸湿性が良く、洗濯してもすぐに乾く。使い勝手が良かったりする。こうなるとなかなか交換するタイミングがつかめない。厚手でぬくぬくとした新品のバスタオルは、吸水性が悪く、何回か洗濯をした後でないと役割を果たさない。
先日、アウトレット店で猫模様のバスタオルを衝動買いした。妻の誕生日プレゼントということにすれば、猫の柄でも許されるだろうという思いもあった。
別の日、実家に冬タイヤを交換にいった時、母に「いらなくなったタオルや雑巾はないか」と尋ねると、自分が30年前に使っていた古いバスタオルが出てきた。母の病的なほど物持ちが良い。
古いバスタオルを汚し、捨ててしまうことに気が引けたが、彼(バスタオルのこと)を使用することにした。
古いバスタオルは最後の務めを果たした。
猫柄のバスタオルは、しばらくお客様のように扱われ、タペストリーのようにして飾られていたが、今では何度か洗濯され、その実力を発揮し始めたばかりだ。
古いバスタオルを弔い、新しいバスタオルを育てる。日常の中に輪廻転生がある。
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