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2018.04 与える人が成功する時代

 組織心理学者 アダム・グラント氏は全米トップのビジネススクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」の史上最年少終身教授。彼の著書「 GIVE & TAKE 与える人こそ成功する時代 」 (2014年 三笠書房)

 本の紹介文から一部抜粋して引用する。「組織はギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)から成る。他者志向の発想とコミュニケーションが仕事の成功をもたらす。リーダーシップ、営業、交渉、事業の立ち上げ、昇進…あらゆるシーンでこの考え方が役に立つだろう」。

■訪問先企業ではどこもパラノイア(疑心暗鬼)がはびこっている。パラノイアの発生元は「テイカー」(奪う人)。テイカーとは他人とのやり取りにおいて利己的な人。「何をしてもらおうかという意識の人」。

■反対が「ギバー」(与える人)。他人とやり取りするときの意識が「何をしてあげようかという意識の人」。誰もが「与える時」と 「奪う時」があり、「大体の人を大体においてどう扱うか」という標準がその人のスタイル。

■大多数の人は「ギブ」と「テイク」の間、つまり「何かしてくれたら私も何かしてあげる」(マッチャー)人を言う。

■会社組織の何千人もの人々を観察し、エンジニアたちに生産性を測ってもらい、医学生の成績表を見たり営業マンの売上を調べるとそれぞれの職業において最低の成績を出したのはギバーでした。仕事が一番遅かったエンジニアは「見返り以上の頼まれごと」をこなしていた人だった。他人がすべき仕事で手一杯になり、自分の仕事が終わらなかった。

■医学部で最も成績が悪かったのは次のような文への共感度が最も高かった生徒だった。「人のために何かしてあげたい」

■営業で最も売上が最低だったのギバー指数が非常に高かった営業マンだった。実際に連絡を取って訊いてみたところ、営業マンはこう答えた。「顧客が大切なのでうちの粗悪商品は売りたくない」。

■ギバーはしばしば自己を犠牲にしてしまう一方で組織に改善を起こす人でもある。

■測定可能なあらゆる指標(利益率、顧客満足度、従業員定着率等)は「与える」行為のチームで助け合い、知識を共有し、面倒を見合う頻度が高い組織ほど優れ、営業費の削減にもつながっていた。

■1人のテイカーがいると、1人のギバーがもたらす好影響の2倍から3倍の 悪影響が生じる。効果的な採用やチーム作りにおいてはギバーを登用することではなくテイカーを排除すること。

■ギバーは多大な時間を費やし、他人を手伝い、チームの改善に尽力した結果、自分の仕事は思うようにいかない。ギバーが活躍できる環境を作るのに必要な要素とは。成績ビリがギバーならトップは誰なのでしょう?テイカーではありません。テイカーは大体の職種において「すぐ伸びますが、すぐ落ちます」。マッチャーに足元をすくわれるのです。

■マッチャーは公正な世界を信じ 「目には目を」がモットー。テイカーに出会うとその人を存分に懲らしめることが自分の使命であるかのように思ってしまうからです。そうやって裁きが下るわけです。大体の人はマッチャーなので「因果応報」というわけです。論理的に考えると成績トップはマッチャーになるはずですが、違うのです。私が観察してきたどの職種でもどの組織でも営業マンの売上データ、医学生の成績でも最上位も最下位はギバーばかりだったのです。

■気をつけないといけないのは「燃え尽きてしまうと認識すること」。助け合いが自然に起こり、それが当たり前である段階でひときわ目立ったのは「同じ科の他の看護師を援護するためだけにいる看護師が一人だけいたこと」でした。そんな環境にある看護師の声。「人に頼るのは恥ずかしいことでも弱さでもなく、実際に推奨されている」。助け合いは単にギバーの成功や幸福を守るためだけではなくギバーのように振る舞う人々を増やすためにも重要。データによると組織で起こる「与える」行為全体の75%から90%がお願いから始まるから。大抵の人はこれができません。理由は無能だと思われるのが嫌とか誰に頼めばいいか分からない、負担をかけたくないなど。誰も助けを求めない組織では誰のために何ができるかさえ分かれば喜んで力を貸したいというたくさんのギバーたちが不満を抱えることになる。

■ギバーが活躍する環境を作るために最も大事なことは「誰をチームに迎えるかをよく考えて決めること」。当初、生産的な与え合いの文化を築きたければギバーを揃えればいいのだと考えました。しかし、意外にもそれは間違いだった。1人のテイカーがいると、1人のギバーがもたらす好影響の2倍から3倍の悪影響が生じることが分かった。

■テイカーを1人でもチームに入れるだけで、ギバーたちは出し惜しみを始める。「周りはキツネ野郎やタヌキ野郎ばかりだから力を尽くすだけ損だ」と。

■ギバーを1人だけチームに入れても「この人に全部任せちゃおう」 となる。

■効果的な採用活動やチーム作りにおいて大切なのはギバーを登用することではなく【テイカーを排除すること】です。

■ギバーとマッチャーだけが残れば、搾取が起こらない。マッチャーのいいところは周りに合わせるという性質だから。

■手遅れになる前にテイカーをあぶり出す。テイカーを見抜くのはかなり苦手。性格特性に気を取られてしまう。「人当たり」というもの。

■人当たりのいい人がギバーで人当たりの悪い人がテイカーだと思い込んでいましたがデータを集積して愕然としました。これらの特性には相関性もなかった。人当たりの良さ・悪さとは表向きの姿だからです。接していて気持ちがいいかどうかです。一方、ギブやテイクは内的な動機という性質が強くその人の価値観や他人に対する意図が表れます。人を正確に見極める方法を本気で知りたいなら当たりの悪いギバーは組織で最も過小評価されている人々です。誰も聞きたくないけど誰もが聞く必要のある批判的な意見を敢えて言う人だからです。そんな人々をもっと上手に評価するべきです。早々と見限るべきではありません。

■私たちが忘れがちなもう1種類が致命的な「人当たりのいいテイカー」。いわゆる詐欺師タイプです。表向きはいい顔をするけど裏ではひどい仕打ちをする。

■表向きはいい顔をするが、裏でひどい仕打ちをする人は、レストランの従業員やタクシーの運転手への接し方を見ていればよく分かる。

■組織からテイカーを駆逐し、安心して周りに助けを求められる環境を整えること。人の力になりつつも自分自身の目標を野心的に追求してもいい文化を作ること。

■「成功とは何か」という考え方も変えられる。「競争を勝ち抜くことよりも、貢献そのものの方が大切なのだ」と。