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2018年10月22日 (月)

最初の傘

 薄暗いその店に買い物に行くのは決まって雨の日だった。

 幼い頃、近所に警察署があった。その前には駅に行くバスの停留所があった。

 そのバス停の脇に、間口は二間ほど、奥行き5㍍ほどの小さな平屋が建っていた。

 平屋には老婆がいた。老婆は裸電球の灯りの下で傘を売っていた。傘は壁に吊され、何段にも立て掛けられ、上がり框の上にも積み上げられていた。

 その店で初めての傘を買った。それから何度も傘を買った。

 あの店は店舗としてあったのか、それとも住居を兼ねていたのだろうか。

 明日からの天気予報が下降気味だったことを思い出し、傘を買った。使っている傘はコンビニで買ったもの。思いもよらず丈夫で長持ちした。どこかに忘れてくることもなかった。5年近く使った。

 傘はまだ使えるが、骨組みの先端が錆びている。傘を閉じたときに雨水が錆びた骨を伝って滴り落ちてくる。先日はその薄い茶色の雨が、ワイシャツにシミを作った。

 半世紀近くの時間が経過した。

 今は、雨が降ってから傘を買いには行かない。雨が降る前に買いに行く。

 俺は成長した。

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