漆の実のみのる国
江戸時代中期・米沢藩の財政改革を成し遂げた上杉鷹山の生涯を描いた作品。本作品は1997年に刊行された藤沢周平氏の最後の長編小説。
今日、記したいのは小説の内容ではなく「本の構造」のこと。今からほぼ20年前に刊行されたこの本は「本来の本の姿」をしていると思うから。
まず、この本は函に入っている。函の装画は喜多川歌麿の「画本虫撰」(国立国会図書館所蔵)と高級感がある。
函から本を出すと、本はグラシン紙という半透明の紙に包まれている。製本は上製本という造り。表紙は布地(クロス)素材が芯紙に貼られ耐久性が高く長期保存に適したつくりになっている。表紙は本の中身よりも3mm程度大きく仕上げるチリと呼ばれる仕様になっている。また、前後に見返しがある。綴じ方は無線綴じ(アジロ綴じ)で背は角背。表紙と背の間に溝がつけられ見開き時の収まりが良いように仕上げられている。
本には天、地、小口(こぐち)、のど、喉布(のどぬの)、はなぎれ、表紙、折り返し、角(かど)、見返し、扉、標題紙、ジャケット、帯紙、チリ、背、折り込み、折れ込み、白ページ、平(ひら)、背文字、前書、後書、前付(まえづけ)など多くの技法が用いられている。
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