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2018年3月 6日 (火)

早春に逝く

 啓蟄  蟄(すごもり)虫(むし)戸を啓(ひら)く

 長岡の3月はまさに早春で、晩冬と勢力を競うかのような時が流れる。その勝敗はいつも「後から来た者が勝つ」と決まっている。春の気配は雪が教えてくれる。屋根から落ちる雪解け水は本格的な春までの時を計る砂時計のように滴り落ちる。公園では木々の周囲の雪だけが他の場所よりも早く融け始める。木は生命を持ち、冬の仮死状態から次第に熱を帯びて甦ってくる。融けて流れた水は道路を濡らし、それが流れ込む川面さえも色づいて見える。

 K社長の通夜・葬儀が終わった。これほど盛大で参列者の多い葬儀を経験したことがない。生前、社長と二人だけで食事する機会を十数回いただいた。世の中には経営者然とした威厳に満ち、時には威嚇的な振る舞いをする社長が多い中、それとは対極にある方だった。K社長は小柄であったが、バイタリティと細かな心遣いに溢れ、笑顔と愛嬌は絶えることがない人だった。進言との思いから生意気なことを言ったこともある。それを受け入れてくれた社長の懐は、限りなく深く、広かった。その“うつわ”には、自分が残りの人生のすべてを費やしても追いつくことはできない。

 二人で撮った写真の1枚すらない。しかし、心に焼きついた言葉や時間の写真を大切にしようと思う。

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