超えられない壁
よくできた推理小説には白々しい偶然がない。世の中で起きる物事や事件のほとんどは必然的な帰結として発生するからだ。
昨年12月、スーパーコンピューター開発会社「PEZY Computing」の社長が助成金不正受給の詐欺容疑で逮捕された。同社の顧問を務めていたのが、セクハラ告発本「ブラックボックス」の一方の当事者である元テレビ局記者で、高級ホテルの住居棟にある彼の事務所賃料を同社が負担していたという。逮捕された社長は逮捕翌週に放送予定だったNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げられる予定だった。
推理小説の序章のように、まだこの事件は靄(モヤ)がかかっていて実体は見えない。しかし、扉の先には扉が、その扉の先にはまた扉があるように感じさせる。そう推測する理由はいくつかある。ひとつは金が絡んでいること。ひとつは官僚が絡んでいること。ひとつは政治家が絡んでいるらしいこと。そして、権力に取り入った偽ジャーナリストも絡んでいる。社会を欺く際の登場人物が全て揃っている。
急速に巨大化する“スパコン利権”が構築される段階にあるからだろう。
特に興味もない事件について記したのは、時代の寵児としてもてはやされ、詐欺容疑で逮捕された彼がこの町の出身だから。年も同じだ。
人は自らの品格を超える品質を産み出せない。
« 豪雪にTシャツを想う | トップページ | 30年間の臭い »
「西向きの窓辺」カテゴリの記事
- 雪の重さを知る者は(2022.11.18)
- 彼は「戦後レジーム」を抜け出せなかった(2022.08.13)
- 内橋克人氏の訃報(2021.09.01)
- 良心の踏み絵(2021.07.03)