東京スカイツリーは誰が造ったか
東京スカイツリーの竣工日(建設工事の完成・完工)は2012年(平成24年)2月29日となっている。閏日(うるうび)になったのは工期かそれとも狙ったのだろうか。2月末日という意味では今日が6周年にあたる。ちなみに東京タワーは1958年(昭和33年)12月23日、サンシャイン60は、その20年後の1978年(昭和53年)4月6日の竣工。仮にバブル崩壊がなければ、スカイツリーは20年刻みの1998年に完成していたのかもしれない。
若い頃、「サンシャイン60を建てた」という老人と話をしたことがある。農村部で大工をしていた老人だった。正式には「工事に携わっただけ」なのだが、老人は「俺が建てた」、「自分が造った」と言う。内心「なぞなぞの答えでもあるまいし」と、半分は老人をバカにしたような感情でいた。老人の息子も大工をしており、茶飲み話でその話が出ると、息子は隣の作業場でカンナをかけながら「またその話か」と言う。もう、2人のその掛け合いを聞くのも3度目か4度目だった。
子どもの頃のなぞなぞに「大阪城を造ったのは誰だ?」というのがある。歴史で習った知識をもとに「豊臣秀吉」と答えてしまうが、なぞなぞの答えとしては「大工さん」が正解ということになる。「サンシャイン60を建てた」という老人の言葉はあながち間違いとは言えない。むしろ、正解に近い。
有名な建築物を建てた人というのは、施主・建築主のことを指す。その建物を建設するよう構想し、指示を出した人、建設資金を拠出した人のことだ。東京タワーもサンシャイン60も東京スカイツリーも、それぞれの必要性に応じて計画され、あるいは、それぞれの経済的な構想に基づいて、巨額の資金と長い年月をかけて建設された。「造った人」の答えは大手企業の社長であったり、大手ゼネコンだったりする(東京スカイツリーの施主は東武鉄道で施工は大林組)。
2月の前半は豪雪、後半は冬季オリンピックに隠れていたが、安倍政権の重要施策に綻(ほころ)びが出始めた。アベノミクスは株価下落に見舞われ、働き方改革は裁量労働制を巡る「不正データ」(不備というレベルではない)が法案の信頼性を毀損。プレミアムフライデー政策は言わずもがな。
アベノミクスは安倍首相の、黒田バズーカは黒田日銀総裁の名をそれぞれ捩(もじ)ってつけらている。これらの政策の施主や施工者は誰になるだろう。安倍首相、黒田総裁、自民党、日本銀行、官僚…。そのどれかに、あるいはその全てに責任を持ってもらいたいが、そういう訳にはいかない。アベノミクスの施主は国民だ。「国民・有権者」に責任が無いということにはならないだろう。
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