重い死 2
水俣病患者の苦しみや祈りを描いた「苦海浄土」(1969年)で知られる作家 石牟礼道子さんが10日、死去した。90歳だった。以下、朝日新聞デジタルから引用・抜粋
熊本県・天草生まれ。生後まもなく対岸の水俣町に移住。短歌で才能を認められ、詩人谷川雁氏らと庶民の生活史を主題に作品を発表した。1968年「水俣病対策市民会議」の設立に参加。原因企業であるチッソに対する患者の闘争を支援した。水俣病患者の声に耳を澄ませて綴った「苦海浄土 わが水俣病」は高い評価を受け、第1回大宅壮一ノンフィクション賞に選ばれたが、「いまなお苦しんでいる患者のことを考えるともらう気になれない」と辞退。以降も「苦海浄土」の第3部「天の魚」や「椿の海の記」、「流民の都」など、患者の精神的な支えになりながら、近代合理主義では説明しきれない庶民の内面世界に光をあてた。晩年はパーキンソン病と闘いながら執筆を続けた。
作家 池澤夏樹さんは自身が責任編集した「世界文学全集」に日本人作家の長編として石牟礼さんの作品を唯一収録した。同氏の追悼文。
「石牟礼さんは近代化というものに対して、あらゆる文学的な手法を駆使して異議を申し立てた作家だった。非人間的な現代社会に、あたたかく人間的なものを注いでくれたあの文章を、これからはもう読むことができない。本当はもっと早くから、世界的に評価されるべき作家だった」
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