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2017.07 古い井戸

20170701 古い井戸と、ドクダミ、アジサイ、モッコク、アサガオ、イチジク。

 昔、実家に庭があった。祖父の時代に土間だった四間ほどの玄関を過ぎ、上がり框(かまち)の右手(北側にあたる)に2間×2間で4坪ほどの中庭があった。そこには古井戸があった。幼い頃は水汲み用のポンプがまだ動いた。ポンプを上下させると勢い良く水が噴き出す光景を覚えている。夏にはスイカを荷造りヒモで吊し、井戸で冷やした。飲用には使っていなかったが、庭の水やりなどに使った。祖父母が相次いで病気になり、やがて世を去ると、井戸は使わなくなった。それどころか子供が近づくことは禁止された。

 中庭から西に向くと幅1.5メートルほどの細長い庭が裏庭に続いていた。その細長い場所は緊張する場所だった。そこにはちょうど隣家の居間が面していた。白いレースのカーテンがかかった掃き出し窓の向こう側から、隣人に見られているような気がしたからだ。

 そこを通り過ぎたところにイチジクの木が立っていた。そこでで左(南)に折れると、裏庭があった。中庭は北、裏庭は西にあり、隣家と裏の家に挟まれていた。

 裏庭の右奥、隣家と裏隣りの家のすぐ脇で、ドクダミが独特の香りを発し、白い花を咲かせていた。ドクダミという名前、それが発する臭気、そしてドクダミがいる場所が、子供が立ち入るエリアではなかった。近くて遠い場所に咲いていた。ドクダミは生命力の強い植物と認識している。ドクダミの匂いと白く小さい花は、水もやらないのに裏庭の奥にいつも存在していたからだ。

 アジサイはドクダミが咲く場所の近くにあった。青や紫の花をいくつも咲かせた。幼い子供の背よりも高く、顔よりも大きな花を咲かせた。今もアジサイの花を見ると、懐かしい気持ちになる。

 モッコクの木は裏庭の真ん中に立っていた。それがモッコクの木だと知ったのは社会人になってからだ。深緑色をした、厚く、力強い葉をしていた。幹にはよくセミの抜け殻がついていた。

 アサガオは西向きの子供部屋の外側で、陽射しを遮るように咲いた。縦と横に支柱が張られていた。祖母が算段したものだろうか。その手間暇を意識したことはなかった。

 まだ暑さが残る頃、イチジクがたくさんの実をつけた。そのままでも食べたが、あまり好きではなかった。熟したイチジクは実が割れて、美しい果実ではなかった。祖母や母は、近所の家などにお裾分けしていた。家では専ら、ジャムにした。イチジクジャムは冷蔵庫に長々とあった。ある年、イチジクが大好物だという友達がいて、喜んで食べていた。変わった人もいるものだと思った。

 ドクダミは晩春、アジサイは梅雨時、モッコクは初夏、アサガオは盛夏、イチジクは初秋。季節を考えて植えられたもののように思える。祖父か祖母か、曾祖父か曾祖母か。それを知ったのは、実家建替えの際、モッコクやイチジクの木を切る時だった。