庇う理由
初任地は三条市だった。会社では右も左もわからないまま営業に配属される。担当業務を任命したその日に営業係が誕生する。その日から目標と呼ばれるノルマがつく。それは25年経った今も変わらない。
住宅地図を見て、前任者の足跡を辿ることしかできないでいた頃、I製作所の社長夫妻の言葉に励まされた。「あなたはきっとお客様に可愛いがられるよ。嫌みがない。親近感が湧く。」 それはお世辞だったのかもしれないが、その言葉に煽(おだ)てられ、自信になった。
I製作所の社長は喉頭ガンで声を失っていた。とっつきにくい人だったが、人の3倍、明朗な奥様がいた。二人三脚だった。信頼感でつながれた夫妻の言葉だったことが、自分を勇気づけたのだと思う。
自分が若者を庇(かば)う理由は、そんな経験が元になっている。いつの時代も、人は誉められてこそ伸びる。ほぼすべての子ども達が過保護に恵まれて育った現在では、尚更だ。
言葉と共に、気持ち・真意を伝える場面は、自分自身が信頼に足る人間かどうかが試される場面であるように思う。
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