地銀統合の“新潟モデル”
公正取引委員会は新潟県の地銀2行の経営統合を承認した。2行は県内1、2位の地銀で、統合後の新潟県内での融資シェアは5割程度。統合で競争が起きにくくなるとの懸念から、公取委は慎重に審査していた。地銀再編を巡っては、長崎県で融資シェアが7割となる統合について公取委が問題視、統合は無期限延期になっている。<朝日新聞デジタルから抜粋して引用>
公取委は「実質的に競争を制限することにならない」と判断した。統合審査では、企業約6,900社にアンケート調査を実施。新潟県内を10の経済圏に分け、中小企業の資金調達への影響を分析。「中小企業が借入先について十分な選択肢を確保できる」と結論付けた。
中小企業の資金調達は公取委が統合認可の根拠とした「借入先の選択肢を確保できる」ようにはならないだろう。資金調達のルートは“パイプ径”のようなもの。パイプ径50㍉と100㍉の直径は2倍でしかないが、面積は4倍違う。
【デメリット】
①資金調達パイプの縮小・固定化 統合銀行に融資を断られた企業、取引条件の変更(含む金利)を迫られている企業に対し、より体力のない信金・信組が融資に応じるケースはマレだろう。シェアの拡大がリスク増加に繋がる融資は難しい。波風が立たない市場となり、取引金融機関は固定化する。
②ATM手数料などの改定など 統合する理由は“生き残り”。顧客サービスの向上は統合理由の第一義ではない。既にメガバンクが実施しているように手数料無料の利用回数に制限(月2回無料、取引状況により複数回上乗せ等)が設けられるだろう。これまで無料だったサービスが有料化されるケースが出てくる。「フィー(手数料)ビジネスの拡大」は金融機関の至上命題だ。
③店舗統廃合 将来的には店舗統廃合が実施され、近隣店舗が無くなるケースが出てくる。
【メリット】
①金融取引の高度化・安定化 デメリット①と矛盾するように思えるが、優良企業にとっては何ら恐れることてはない。むしろ銀行の経営基盤が強化され、更なる低利融資も可能になる。高度化する金融取引の恩恵に与ることも可能になる。また、メインバンク制が強固になると思う。
②金融市場の活性化 これもデメリットと矛盾するように感じるが。そもそも新潟県は国内有数のオーバーバンキング地域。下部金融機関の統合・連携・淘汰の呼び水になる。企業側も自社の金融取引を見直す機会になる。そもそも資金調達の要否によっては、地元金融機関と取引する意味があるか疑問だ。資金決済方法は多様化し、インターネット専業銀行には優れたサービスがある。
③閉鎖的な企業文化に風穴が空く 旧い体質から脱却する千載一遇の機会。縁故入社、常態化するパワハラなど、ある意味、外部から監視される職場となることは自浄作用が働かない組織では最大のメリット。
構造不況業種とも言われる地銀業界にとって、今回の統合認可の意味は大きい。「融資シェア50%までは認可、70%は不認可」。この「新潟モデル」は地銀統合の認可基準になるだろう。合従連衡は加速する。
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