勝ち逃げを目論む人たち
11月10日 製造品の検査データを改ざんしていた神戸製鋼は、この問題(事件)に関する社内調査の報告書を公表した。その中で、不正の原因としてあげられていた5項目が興味深い。
1.収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土 2.バランスを欠いた工場運営 3.不適切行為を招く不十分な品質管理手続き 4.契約に定められた仕様を遵守することに対する意識の低下 5.不十分な組織体制
更に社長会見では「複数の部門に広範囲の関与者がいた」、「長期間、不適切な行為が継続された」、「社内で公に発覚しなかった」、「(収益が上がっている限り)不適切行為を把握する姿勢が不足した」、「(経営が工場の抱えている問題を解決しないため)“現場が声を上げても仕方がない”という組織風土を生んだ」ことなどが不正事件の土壌にあったと語られた。
(事件の企業・経営者に限らず)過度な収益重視にまみれた経営者は、あたかも企業が生き残りゲームに晒されているかのように、あらゆる策を使って従業員の尻を叩いてきた。それはある程度までは本当だが、ある程度は嘘だ。それらの「ひとつひとつの場面」、「ひとつひとつの現場」、「ひとつひとつの案件」では、個人の生き残りゲームが行われてきたに過ぎない。それは市場という公の場ではなく、企業内での私的な生き残り競争。つまり、出世競争の姿にほかならない。そのゲームで生き残った経営者・経営層は冷や汗をかいていることだろう。彼らの価値観からすれば、彼らが本当に勝利するのは“ババ抜き”に勝利して、“勝ち逃げ”した時だからだ。
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