冬の日
立冬。2015年に映像化された藤沢周平氏原作のドラマ「果し合い」、「遅いしあわせ」、「冬の日」を観た。当時の再々放送か再々々放送のようだ。「冬の日」は50分に満たないドラマだが、短編小説の読後感が残る。
「冬の日」 冬の冷え切った江戸の町で古手物屋(古着・古道具屋)の清次郎は家への帰り道、寒さ凌ぎに入った飲み屋で美しい女に酌をしてもらう。女は幼い頃に世話になった履物問屋の一人娘おいしだった。清次郎は幼なじみのおいしとの再会を亡き母の仏前に報告し、少年だった日々、体を張っておいしを守ってやったことを思い出す。おいしは家の商いが傾き、一家は離散。離婚や身売りの辛苦を重ね、今は酌婦の身で、やくざ者と暮らしていた。一方の清次郎も奉公する呉服問屋が借金の返済に窮し、取立屋への傷害で牢屋へ入る。脇目も振らず行商に精励し、ようやく小さな店を始めたばかりだった。そして、再び、男からおいしを救い出す巡り合わせになる。傷ある男女が、寄り添って人生をやり直そうとする。
藤沢周平没後20年。短編集「橋ものがたり」から、「小さな橋で」、「吹く風は秋」、「小ぬか雨」が映像化され、「三屋清左衛門残日録」の続編も制作される。いずれも有料のCSでの放送だが、そう急ぐ必要もない。先々の楽しみにしておけばいい。藤沢氏の小説は色褪せない。それを原作とする映像作品も普遍性を宿す。役者が本(原作・脚本)を重要視する意味がわかる。(写真はBSフジHPから)
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