時給2,000円
先週、大手宅配便事業者が年末のアルバイトを時給2,000円で募集しているというニュースがあった。もちろん首都圏などの一部地域での話で、全国一律2,000円で募集している訳ではない。この時期は歳暮やクリスマスプレゼント、年越しの買い物、ボーナス時期の買い物等々で、宅配便取扱量は通常月の2倍に増えるという。確かに時給2,000円はキャッチーな見出しでニュースになったが、そう驚く話でもない。
月給50万円の人は月20日と仮定すると日給25,000円、8時間労働なら時給3,125円だ。月給32万円の人は月20日と仮定すると日給16,000円、8時間労働なら時給2,000円だ。月給50万円はなかなかいないかもしれないが、月給32万円、手取り25万前後の人は少なくない。時給2,000円が、非正規労働、社会保険の適用外、年末年始の繁忙期、期間限定の給与であることなどを考えると、適当な水準、若しくは、まだまだ低い水準だと思う。
30年前。18歳の時に初めてアルバイトをした。父の知人に口利きしてもらってひと月だけ働かせてもらった。給与も時給も知らされず、1日10時間、朝8時から夜7時まで働いた。ひと月後、初めて貰った給料袋には70,000円程度入っていた。明細には「3,000円/日」と書いてあった。時給に換算すると300円だ。当時から最低賃金制度はあった。食堂の掲示板に最低賃金を示すポスターが貼ってあったからだ。手にした金額はそのポスターに書かれた金額の半分程度だった。それから数ヶ月後、首都圏では学生アルバイトで時給1,000円も珍しくはなかった。
バブル経済、バブル崩壊、就職氷河期、不良債権処理、IT革命、構造改革、デフレ、失われた20年・30年、アベノミクス。時間や時代は過ぎた。しかし、何かは変わっても、何かは変わっていない。あの頃、社会では看護士(当時は看護婦)不足が叫ばれていた。今も看護士は慢性的に不足していて、保育士や介護士も不足している。そして、宅配便従事者が不足する世の中になった。表層は変わって、本質は変わっていない。そんな気がする。保育士や介護士の給与は時給1,000円に届いているだろうか。
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