フィールドワーク
~ お盆の夜に ③ ~
小学校6年生の授業で自分が産まれた町の歴史や産業を習う時間があった。4月に教本を使った座学があり、おおまかな歴史を習う。その後、数人の生徒でグループを作り、テーマを設定する。各々のテーマについて調査したことを大洋紙(模造紙)に書いて発表するというものだった。図書館で調べたり、学校周辺の公的施設や企業を“アポなし”で訪問した記憶がある。今思えばフィールドワーク的な方法で、子どもの自主性に委ねられた授業だった。
町の歴史や産業といっても、覚えていることは2つ。町を流れる刈谷田川(かりやたがわ)は暴れ川で、度々、水害に見舞われてきたこと。市内中心部の川の流れを直線状にする大規模な河川改修事業が高度成長期に実施されたこと。そして、「繊維産業の町」であることだった。各グループのテーマは川と繊維に収れんしたが、中には地層を調べるグループがあった。
「リーダーシップがある者」が率いるグループや「強い思いがある者」が率いるグループがいい調査・研究をした。絵やイラスト、装飾などの「美術センスが高い者」が率いるグループは個性的な発表をし、「小さいことに囚われない者」が率いるグループは調査も発表も早かった。それらの特徴は、社会における集団・組織の有り様と何ら変わらない。
自分たちのグループは繊維産業をテーマに、実際にいくつかの企業を訪問することから始めた。ある企業ではパートのおばさんが細やかな作業で苦労している話を聞いた。ある企業では社長自らが繊維産業の概要を話してくれた。ひとくちに繊維産業と言っても、糸を染色する会社から、製品生地を作る会社、実際に衣類をデザインする会社、ボタンつけをする会社、完成品を卸売りする会社などがあることを知った。
何か方向性がある訳ではなかったが、まずは現場の声を聞き、現状報告を載せた。品質を高めるため、細やかな作業を積み重ねる苦労があること。作業課程では多くのパート労働者が産業を支えていること。個々の企業は小さくても、多様な工程を請負う会社があることで、「繊維産業の集積地としての力を持っている」こと。そんなまとめ方をして発表した。
労働者と経営者に取材し、事実を正確に伝える。今年のお盆は、そんな初めてのフィールドワークを思い出しながら、酒を飲んだ。
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