72年目 終戦記念日
図書館の玄関にイベントや催し物を紹介するコーナーがある。音楽会や観劇、各種の発表会などのリーフレットが並んでいる。その中に海外友好都市との交流事業海外短期留学との案内を見つけた。何げなしにそのリーフレットを手に取り、応募要項を眺めると、選考試験には面接、学力試験と並んで英会話が含まれていた。それは当然のことなのだろうが、少々、物申したい気持ちが疼(うず)いた。幼い頃から英語教室に“通えた”子どもや短期留学などの経験がある学生が大きなアドバンテージを持つからだ。
お茶の水女子大学が実施した「全国学力・学習状況調査結果」を活用した「学力に影響を与える要因に関する調査研究」で下記のとおり報告されている。
1.(全国学力・学習状況調査で)最低の学力の児童は親の年収が調査における最低区分(200万円未満)の児童だった。最高の学力の児童は親の年収が調査における最高区分(1,500万円以上)の児童だった。その差は国語でおよそ20点弱、算数で20点強だった。
2.学力は本人の能力と努力にも依存し、必ずしも親の年収で決まるものではない。しかし、親の年収差によって子どもの学習環境に違いが生じることは想定される。塾などの学校外教育費について、中学受験を予定している家庭は1カ月におよそ2万4,000円支出しているのに対し、しない家庭ではおよそ3,900円と6倍の差があった。
3.親の経済力と子どもの通塾率は強い相関がある。通塾すれば学力が高くなることは確認されている。親の経済力と子どもの学力も間接的に相関関係にある。
裕福な家庭の子どもは、小学低学年から塾などの学校外教育を受ける。中学・高校も塾に通い、難関大学に合格するというコースを歩める。一方、貧しい家庭の子どもは、仮に落ちこぼれてしまっても補習塾にすら行けない。親の収入によって、子どもの教育の機会不平等が生まれている。
国力を高め、国を強靱化するのは、防衛費を増額し、軍事力を増強することではないだろう。学力や語学力に限らず、あらゆる能力を認め・育て・伸ばしてやれる社会の仕組みを作ることが、むしろ国力増強の近道だろう。
72年目の終戦記念日。「生まれ」による格差は拡がるばかりだ。
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