新聞っていりますか?
休日のお昼近く、1階のポストから新聞を持ってきた老人とエレベーターで一緒になった。老人は「ヘヘッ、ゴミ」と言って、右手に丸めた新聞を持ち、左の手のひらにポンポンとぶつけていた。老人が呟いたことは、日頃から感じていたことなので、「朝は新聞ですが、夜にはゴミになりますね」と、とっさに同調する言葉が口をついた。
新聞を読まなくなった理由はいくつかある。指を折って数えてみると4つある。
1.取りに行くのが面倒になった マンション住まいにとって、新聞を1階まで取りに行くのは面倒だ。玄関前までの宅配を許可しているマンションもあるようだが、防犯面から実現は難しそう。
2.インターネット環境が整備された ネット環境が整ったのは2001年頃。ダイヤルアップ接続から発展した「ブロードバンド・常時接続」が2000年代前半、爆発的に普及した。現在では「光ファイバー高速通信」が主流になった。当初は新聞記事ひとつでもかなりの時間を要していたが、現在では数秒でニュースの動画をダウンロードしてしまう。
3.経済的要因 文明の利器に対する金銭的負担の増加を、家計はどのようにして補ってきたのだろう。携帯電話がない頃はそれら通信機器の料金は発生しなかったが、現代の家計には当然のように存在する。いわゆる通信料。インターネットに必要なプロバイダと回線業者への支払はひと月あたり4千円程度だろうか。新聞はひと月あたり3千円程度。ほぼインターネットの回線料金と均衡している。個人が社会の情報を取得する道具が、新聞からインターネットに変わったと考えれば、新聞を読まない(新聞を選ばない)ことは自然の流れと言える。
4.新聞の力の衰退 インターネットの普及と新聞の衰退は、反比例してきた。新聞の購読数が減少しているとネットニュースで見聞きする。しかし、そのような売上減少の陰で、“新聞の力”が衰退していることが、遠因のようであって、実は主要因であるように思う。
「 新聞は ちらしを包む 包装紙 」 そんな俳句があったような気がする。その包装紙も、記事は半分で半分は広告だ。ちらしで他店より10円安いキャベツを見つけるよりも、新聞購読を止める方が家計に優しい。必要な日には1部130~160円で売っているのだから買えばいい。
今度、あの老人に会ったら言ってみようと思う。「新聞っていりますか?」と。
「西向きの窓辺」カテゴリの記事
- 雪の重さを知る者は(2022.11.18)
- 彼は「戦後レジーム」を抜け出せなかった(2022.08.13)
- 内橋克人氏の訃報(2021.09.01)
- 良心の踏み絵(2021.07.03)