2年前の傷 2015.5.29 PM8:00
人生には後悔する出来事がたくさんある。サラリーマンとして生きる上で、「気持ちの切り替え」とか「オンとオフの切り替え」がかなり重要な要素であることはわかっていても、それがうまくいかないこともある。
2年前の5月29日は月末の最終営業日だった。その日は毎月恒例の飲み会の日だった。駅前の居酒屋は空席が目立っていたが、予約で満席だった。金曜日だ。参加者は男ばかり10名ほど。午後8時を回った頃、次第に満席になった店内に怒声が響いた。店内は騒がしかったが、その声は周囲のテーブルに届き、店内は一瞬、静まり返った。
怒りの矛先はひと月前、新しい職種にローテーションされてきた20代半ばの青年に向けられていた。およそ20歳年上の上司に怒鳴られていた。最終的に上司の言い分は「自分の目の前から消えろ。飲み会の席から退去せよ」ということだった。それは教育でも、指導でも、叱責でもない。自らの権力を誇示・威嚇し、まるで自らのストレスを発散・解消しているかのような怒り方だった。
上司は内々の飲み会では、いつも決まって遅れてやって来た。上司を待つ部下たちは、決まって“席決め”で一悶着した。上司の前や隣席に誰が座るか。標的になる彼への風当たりを少しでも和らげよう、防ごうという思いもあったが、なかなか決まらない。なぜなら、皆が上司の前席や隣席には座りたくないからだった。
彼はひとしきり罵倒された後、退去するよう命じられた。隣席にいたグループの客は「パワハラですね」とつぶやいていた。そんな客をなだめ、お騒がせしますと謝った。ここは会社ではなく、勤務時間でもない。その命令に従う必要は無かったが、彼が上司の部下であることに変わりはなかった。勤務時間を終えた後、発動された帰宅命令に彼は従った。
飲み会の後、彼を慰めることはできたが、飲み会の席上で、彼を庇うことができなかった。人生には後悔する出来事がたくさんある。2年前の傷跡は、一生消えることはない。
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