年を重ねたこともあって、多少なりとも体臭に気をつけるようになった。オジサンの体臭は加齢臭と呼ばれて、ランクが上がる(下がる?)。体臭のあるなしに関わらず、単純に自己管理のひとつだろう。マナーであり、デリカシーの範疇だと思う(その意味では、喫煙者には自己管理が甘く、緩い人が多い)。
ところで、企業ではどうだろう。「企業の体臭」、「企業の加齢臭」。
4月25日 朝日新聞デジタルから抜粋・要約・引用 「商工中金の不正融資414億円 本部も隠蔽に関与」
政府系金融機関の商工中金が、国の制度で不正な融資を行っていた。全国92支店のうち、35支店で99人が関与し、計約414億円を融資したことが明らかになった。職員は「ノルマに追われ、実績を上げるため」取引先の書類を改ざんして融資していた。本部が把握しながら隠蔽されたケースがあることもわかった。経営が悪化した企業へ国が行う「危機対応業務」の低利融資で不正を行っていた。制度が使えない取引先にも制度を使えるよう、業績が悪化したように見せかけたり、従業員数を偽ったりしていた。不正融資は760件、約414億円。実際に制度の適用外だったのは348件、約198億円分で、本来受けられない利子補給額は約1億3千万円だった。
第三者委員会による調査は進行中で、更なる不正が発覚する可能性がある。商工中金(現在は株式会社商工組合中央金庫)は1936年に政府系金融機関として誕生。小泉首相時代の行財政改革の過程で(民業補完に徹するべきとする)政策金融機関改革の議論が進んだ。しかし、政府保有株式の処分を行わない等の巻き返しがあり、完全民営化が遠のいた経緯がある。加えて東日本大震災の発生を受け、政府保有株式の処分時期が再度、延期されている。
“政府系”ですらこれだ。「どこかの店の某が不正流用した」という話ではない。全国の店で多数の職員が関与している。こういうものを“組織的犯罪”と呼ぶ。制度の要件に該当しない企業に融資にすることなど、一般職員・行員にできるはずがない。上司の関与、組織の関与がなければできる芸当ではない。震災対策資金は、本来、その恩恵に授かるべき中小零細企業ではなく、業績に懸念のない、地場優良企業に向けて実行されたのだろう。決算書を改ざんし、業績が悪化したように見せかけて。おそらく、その資金は他行融資の借換資金か自行プロパー融資の返済に回っているはずだ。
繰り返す。“政府系”ですらこれだ。民間は推して量るべし。企業も体臭を持ち、加齢臭からは逃げられない。しかし、今回のそれは加齢臭どころではなく、腐敗臭だ。
【追記】 5月9日 経済産業省、財務省と金融庁は危機対応融資で不正融資が行われていた商工中金に対し業務改善命令を発動した。しかし、組織的な不正事件に対する厳格かつ精緻な調査の実行と業務の改善命令に過ぎない。組織的犯罪であること認定しなければ納得できない。