田中角栄ブーム
去年は田中角栄ブームだった。書店に並ぶ「角栄本」の数は、ここが彼の地元であることを差し引いても、ブームが下火になった今も増えているように感じる。過去の首相に関する書籍が出版ラッシュになること自体、珍しい現象だ。そのことはそのまま、彼自身が稀代の人物であったことを物語っている。田中角栄氏の逸話は枚挙にいとまがない。
田中角栄は新潟3区の特に雪深い山間部で、社会党・三宅正一(※)=日本農民組合支持者を切り崩しながら、自身の勢力を拡大した。田中はロッキード事件後の第34回衆議院議員選挙(結果は自民党大敗、三木内閣は総辞職)で、自らに逆風が吹く選挙であるにもかかわらず、「農民の恩人である(三宅)先生だけは落選させてはいけない。落選させたら新潟県人の恥である」と演説した。
小さなエピソードだが、金の逸話でなく、数の逸話でない。心の逸話であるこのエピソードが好きだ。
新潟3区に生まれた自分の心象風景の中に、彼の姿がある。またいつか記すことにする。
※三宅正一(1900.10.30-1982.5.23) 農民運動家・政治家・衆議院副議長
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