BOOK・OFF 2
BOOK・OFFにも本屋と同じように色がある、と思う。商品である本を店頭に持ち込む客が色をつける。
BOOK・OFFの価値・本領は「108円の棚」にあると信じて疑わない。108円の棚にはBOOK・OFFの色がより滲み出ている。
「誰かのクラクション」 尾崎豊 32年前の本。持ち込んだのは40代後半から50代前半の人物だろう。これまで大切に保管していた青春の思い出。処分したのは本だけだろうか。尾崎豊にはタイトルと同名の曲があるが、その歌詞とは違う散文詩の強烈な印象が残っている。
「本所しぐれ町物語」 藤沢周平 30年前の本。文庫ではなく単行本。ところどころにシミが浮いている。ぱらぱらとページをめくると、少し畳のような匂いがした。70代老人の遺品整理で処分されたものだろうか。
「愛の無常について」 亀井勝一郎 18年前の本(初版は67年前。作者は50年前に死去)。普遍的な本だと思うが、個人的にはこの本を女性が読むとは想像しない。読書家で真面目な男性。当時40~50歳。現在60代後半か。
「国語辞典 明鏡」大修館書店 14年前発行。どのタイミングで買った辞書だろう。小学生なら就職した男性、中学生なら結婚した女性か。
108円の棚には、冒険心(108円なら買ってみよう)、射幸心(108円でどんな時間が過ごせるだろう)、猜疑心(疑義の念、こんな変わった本、誰が読んでいたんだろう)、郷愁(読んだことがある。持っていたが手放した。読む機会を逸していた。高くて買えなかった)、怨念(思考や思想がかけ離れていたり、少しひねくれているが、時には作家の才能にも)等々。
108円の棚には、人間の“業”のようなものが宿っている。商品である本を買う客もまた、色をつけているんだと思う。
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